柔軟に、でも流されない。働く茨女の居場所えらび
「全国転勤の可能性もありますが、よろしいですか?」
就活でよく聞く定番の質問。迷わずハイと答えられる女性は、
どれくらいいるだろう。
時代は男女平等とはいえ、いつかは家族を持つかもしれない。
親に「戻ってきて」と頼られることもあるかもしれない。
でも、都会で生きる理想も捨てきれない。
地元か、都会か。揺れる気持ちはありながらも自分なりの居場所を見つけた、
5人の「茨女」が集まりました。
『茨女』とは…
「いばらき県出身の女性」の生き方を取材するフリーペーパー。
今回は『茨女』編集部が、働く地として茨城 / 東京を選んだ茨城出身女性にお話を聞いていきます。
参加者
石川 蘭さん
22歳、常陸大宮市出身。茨城から都内の旅行系専門学校に通ったのち、昔からの夢だったグランドスタッフとして羽田空港で働く。今年で社会人3年目を迎えた。現在は埼玉在住。旅行が大好き。
川島 飛鳥さん
24歳、ひたちなか市出身。都内の大学卒業後、1年間インターン生として勤めていたPR会社に今年から正社員として働いている。東京在住ながら日本の様々な地方が大好き。
西村 杏奈さん
26歳、石岡市出身。都内の大学で英語を学び、茨城県内で語学が活かせる貿易業に携わる。つい最近転職して横浜の金属メーカーへ。お酒が大好き。
伊王野 求美さん
26歳、水戸市出身で現在も水戸住まい。茨城から千葉の大学に通いつつ、4年次に水戸の梅大使になる。都内でアニメーター経験を経ていまは茨城空港のスカイガイドに。アニメ『めぞん一刻』が大好き。
堀越 愛加さん
29歳、ひたちなか市出身。都内大学で写真を専攻、卒業後は茨城の小野写真館に就職。7年目のいまはひたちなか市にいながら人事担当として各地を回る。山が大好き。
東京⇔茨城 居場所は意外とこだわりなし派が多め
編集部
みなさんそれぞれがいまの職場を選んだきっかけってなんですか?まずは県外就職組から教えてください。
石川
私は場所には特にこだわってなくて、小さい頃からの夢だったグランドスタッフになりたい一心で就活してました。茨城空港と羽田空港にエントリーしていたんですが、内定が早かった羽田空港のほうに。
川島
私も場所にこだわりはなかったです。何かしら地域にかかわることはしたかったけど、いま地元で活躍できてる人たちって何かしら特技を持っているなと気づいたんです。私にはいま何も武器になるものがないので、いろいろな地方の魅力を発信するためのPRを学ぼうとPR会社のインターンを始めました。あと、東京の挑戦しやすい環境に居続けたかったというのもあります。
編集部
将来像が明確だった石川さんと、目的が先にあって手段としての職種を決めた川島さんは対照的ですね。いま都心で働いている西村さんも、はじめは茨城で働いていたんですか?
西村
はい。初めは観光業界に入ろうと思ってたけどなかなか思うようなところがなくて。そんな中、アメリカ人の友達の一言にびっくりしたんです。「茨城のネストビールが大好きで、アルコールを飲んではいけない体質だけどあれだけは飲んでしまう」って言われて、そんな素敵なものが地元にあるんだ!と。新卒採用はしていませんでしたが酒造所のホームページから連絡を取って、たまたま大学のOBの方がいたので訪問させてもらって、就職を決めました。
編集部
すごい行動力!では、茨城から最近横浜に転職した理由は…?
西村
前の会社で、自分たちでつくったものを提供して喜んでもらえるメーカーの楽しさを知ったので、よりグローバルな製造業で働きたいと思っていました。いまは車の部品を扱うドイツ企業の日本支社で働いています。
伊王野
私は逆に、都心から茨城に戻ってきたパターンですね。「東京=夢」って感じだったんですが、アニメーターは激務で3日帰れないこともあったし、能力がないと稼げないし、向いてないなってひとり暮らしの東京の家で毎日泣いてました…。水戸に戻って体調を整えたあと、観光大使のお仕事もしながら空港で働くようになりました。
編集部
イメージと現実とのギャップがあったんですね。グランドスタッフに憧れていた石川さんはそういう怖さはありませんでした?
石川
もともと大変なのは知ってたし、もうやっぱり夢だったので、入りたいっていう気持ちが強かったです。もう祈るしかないって思ってました(笑)。
編集部
堀越さんはどうですか?
堀越
私は写真を撮るカメラマンという仕事にもともと興味がありましたが、大学は全く違う分野に進みました。でも就活のとき何がやりたいか自分に問いかけてみて、やっぱり写真とかかわれるお仕事がしたいと思いました。都内でも就活してたけど、だんだん内定がゴールじゃないなって考え始めて。一人っ子なのでゆくゆくは茨城に戻るんだろうなと想定し、Uターンして地元の写真館で働くことにしました。
編集部
確かにいつかは戻ろうって考える人多いですけど、他の地域で生活して家族もつくったりすると、なかなか戻ろうと思っても大変ですよね。
堀越
実際、2年前に父が脳梗塞で倒れたときがあって、そのとき「やっぱり茨城にいてよかったな」って思いました。
働くだけじゃない 遊ぶ・休むも自分の満足できる場所で
編集部
いまの生活で気に入ってるところはありますか?
伊王野
茨城に1つしかない、空の玄関口である空港で働けているステータス感はありますね。皆が知ってくれてる場所だし、テンション上げて働けてるかな。車通勤で、満員電車に乗らなくて済むのもありがたいです!人と密着するのが本当に苦手なので、自分だけの空間は車ならではの良さですね。
西村
電車での通勤ラッシュは大変ですもんね。私のところも、フレックス制なので通勤はしやすいです。本社とのやり取りがある日は時差の関係上、遅め出勤のほうが連携しやすくて、その日のスケジュールに合わせて出社できます。
全員
いいな〜!
西村
あとプライベートでは、お酒!前職でお酒が大好きになってしまったんですけど、茨城だと車だからあまり飲めなくて。でもいまは職場から徒歩10分の所に住んでるから、仕事帰りに1杯だけ飲んでほろ酔いで帰る、っていうのを楽しんでます。家賃も茨城のときよりプラス1万くらいなので、生活費も思ったよりかかりません。
川島
私の会社も徒歩圏内です。10時出社なんですけど、この前寝坊して9時に起きても間に合った(笑)。あと終電気にせずに飲み会にいられるのも魅力かな。都内だと茨城や他の地方のイベントも多いので、仕事もやりつつ興味のあるものに参加できて嬉しいです。
堀越
人事の仕事で都心への出張も多いんですが、茨城と都内を行き来できることはメリットに感じてます。
石川
私は常陸大宮に住んでいたとき、早く都会に行きたいなっていう憧れはすごく抱いていました。
ただ、入社してすぐの頃住んでいた川崎は人が多すぎて落ち着かなくて…。いま住んでる埼玉くらいのほうが都会すぎず地方すぎず、ちょうどいい。電車通勤でも、埼玉からだと座れるのでありがたいです。最近お休みの日はカフェとか回って、埼玉のお店を紹介するインスタグラムに投稿とかもしてます。
理想を描きながらも、ライフステージの変化には柔軟に
編集部
自分基準の心地よさ、ゆずれないポイントがそれぞれあるようですね。就活中ってつい働くことだけに注目しがちだけど、通勤方法や余暇も含めて想像しておくといいのかも。でも、ライフステージが変わるとそういう基準も変わりそうですよね。
伊王野
茨城に1つしかない、空の玄関口である空港で働けているステータス感はありますね。皆が知ってくれてる場所だし、テンション上げて働けてるかな。車通勤で、満員電車に乗らなくて済むのもありがたいです!人と密着するのが本当に苦手なので、自分だけの空間は車ならではの良さですね。
西村
確かに。前職の頃は「茨城に骨を埋めよう」って思ってたけど、転職するとき東京のほうが出会いが多いし、じゃあ東京もいいなと思いました(笑)。結局横浜になりましたけど、婚活ツアーとかは結構ありますし。結婚することになったとしても、茨城にほど近い関東で暮らしたいですね。茨城のまったり感は好きなので、似たような雰囲気の中で落ち着いて暮らしたい。
堀越
私はずっと茨城かなあ。地方に住んでいたいんですよね。本当は大子あたりの山寄りがいい。小さい頃から那珂湊がそばにあって、引っ越してもずっと海沿いで、なんとなく山いいなあって思ってたので。
茨城県内の人と結婚できたら理想です。共通点も多くて話も盛り上がりそう。
でも中には結婚してもいまは遠距離で、っていう人たちもいますよね。いまはそれぞれの場所で仕事をしながら、いつかは一緒に暮らす、っていう。
編集部
人それぞれのタイミングがありますよね。単純に自分が将来暮らすとして、地方と都会どっちがいいですか?
編集部
…川島さんだけ都会、他のみなさんは地方がいいという感じですね。
川島
好きな場所が茨城だけじゃないんです。どこか1カ所じゃなくて、いまはあちこち行ける時代だと思うんですよね。だったら私は、情報収集がしやすくて会いたい人にも会いやすい都会がいい。まだ親も元気だし、いまは個人として生きていける能力を東京で身に付けたいですね。このまま東京にいて、地方から来た人のサポートもできる存在になれたらと思います。
編集部
最後に、自分が就活生だったとして、何を重視したらいいと思いますか?
西村
私もそうだったんですけど、アメリカの友達が教えてくれなかったらネストビールのことを知らないままだったと思うんですね。茨城の中のいいものをもっと知ってほしい。その中から自分は何が好きか、自信を持って売れるものは何かを考えていけるし。
川島
自分が大切にしたいことを軸にして、職種、働く場所、やりたいこととかの中から優先順位を決められるといいと思います。自分の中で「これは外せない」って思うのは何か、それを細分化して考えることが大事だと思います。たとえば公務員になりたいなら何で公務員なのか、「こうしたいから○○になる」ってちゃんと自分で決められたら頑張れますよね。
企業側からも、どういう人に来てほしいか情報発信していくのも大事だと思います。
堀越
採用の場面では、移動をしぶる女性もよく見ます。もちろん考え方はそれぞれですが、将来的に結婚したらエリアを絞らなきゃいけないこともあるかもしれない。なら逆に、若いうちに挑戦するのもありだよってよく言いますね。
進路を決めたあと、それを正しい選択にするのは入社した後の自分自身。その場その場で正しい選択をするというより、就職後に頑張って正しい選択にしていくのは自分、という気持ちが持てればいいと思います。
就活や家庭の事情によって、選べる選択肢は変わってくるのが現実。
ただ、飛び込んだ環境の中でどうやって理想の生き方に近づくかは、
自分次第なのだと感じることができました。
問い合わせ先
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- 2021年8月26日
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